不知火文庫

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少数派

少数派は平均からのズレを自身で折衝して生きていかなくてはならないという宿命を持っている。

 

一般的には少数派の意見や存在も、多数派のそれと同じように尊重されることが好ましいとされている。しかし、その尊重が多数派から少数派への働きかけによって生じることは極めて稀で、ほとんどの場合は少数派から多数派に働きかけることで生じる。多数派は少数派とは異なり、何もしなくてもある程度尊重してもらえるからだ。

 

多数派は少数派を尊重する努力をしなくても自身を尊重してもらえる状態をある程度維持できる。尊重されるためにリスクを取る動機が少数派ほど豊かではない。一方、少数派はリスクを取って多数派に歩み寄らなければ、ほとんどの場合において尊重されない。残酷なようだが、少数派への尊重は何もせずに与えられるようなものではない。その残酷さの分だけ、少数派は多数派よりもリスクを取る動機が強い。

 

尊重されないかもしれないという差し迫った危機を抱える側の人間が、自身たちの尊厳のために知を駆使して多数派と折衝し、彼らから一定の尊重を獲得する。

それがタフな少数派の生き方だと思う。