不知火文庫

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琵琶湖疏水 その1

 先日、知人が経営する塾の宣伝用に作った問題。もうすぐ100問に届く。

 

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琵琶湖疏水 その1】

 数か月ぶりに京都へやってきた。

 いつもなら京阪出町柳駅か阪急桂駅で降りるのだが、今回は阪急河原町駅で降り、東西線に乗り換える。今日は蹴上にある琵琶湖疎水の近くに用事があるのだ。

 蹴上駅に着く。時刻は13時52分。大体時間通りだ。改札の前まで行くと、桂さんの姿が見えた。桂さんは私の大学時代の先輩で、大学に残って研究を続けている。

 改札を抜けて桂さんに声をかける。

「桂さん」

「ああ、はかせ。久しぶりだね」

「すみません。待たせてしまいましたか」

「いや、僕もさっき来たところだし、時間に遅れたわけでもないんだから気にしないで」

 そういわれて私は軽くうなずいた。桂さんが目線で私を促しながら歩き始める。それに従って私は桂さんの横に並んで歩く。

琵琶湖疏水の方に向かうんですか」

「うん、僕の新しい拠点はそっち方面にあるからね」

 なるほど。

 しばらく歩き続けると朱色の鳥居の上部が見えてくる。平安神宮だ。そして、その近くには京都市美術館がある。

京都市美術館か、懐かしいなあ」

 独り言のつもりでつぶやく。

「ああ、一緒に回ったもんなあ。懐かしいね。あ、でも今はもう京都市京セラ美術館だよ。ま、細かいことはどうでもいいか」

「あ、京セラのものになったんですね。知らなかったです」

 数年前、桂さんと私は当時の京都市美術館で開催されていたエルミタージュ美術館展を一緒にみて回ったのだ。

 私は絵は好きだったものの芸術というものに関してはあまり関心がなく、造詣が深いというわけでもなかったので、美術館展自体はあまり楽しめなかった。だが、合間の休憩室で桂さんと話したり、美術館を出た後に桂さんと一緒に岡崎付近で湯葉屋さんで昼食をとったときはとても楽しかった。

 私は大体いつも行く場所にはほとんどこだわりがない。一緒に行く人との相性さえよければ、だいたいのところを楽しめてしまうのだ。

 そんなことを思い出しながら研究の話や教育の話をしながら歩いているうちに琵琶湖疏水に着いた。

「ああ、琵琶湖疏水だ」

「うん。二か月半くらい前だったらあじさいがきれいに咲いていたし、二か月半くらいあとだと紅葉がきれいになっているんだろうけどなあ」

「ああ、そうですね。残念です。ま、この疏水だけでも十分目の保養になるので問題ないですよ」

「たしかに景色がいいよね、この辺りは。実用性を優先しているんだろうけど、それでもここまできれいな景色に仕上がってるの、すごいよね」

「ええ。そういえばこの疏水、実用的な目的で作られたんですもんね。琵琶湖から京都市内に水を引くために」

 しみじみと疏水を眺める。いい眺めだ。

「そういえば、琵琶湖の水の総量と、1年間でこの疏水に流れ込む水の総量ってどのくらいなのかなあ」

 私は軽くため息をついた。

「桂さん、せっかくしみじみしていたのに風情が台無しじゃあないですか」

 桂さんの方を見ると、桂さんは我関せずといった様子でにこにこと笑っている。やれやれ。

【問】

〇琵琶湖の水の総量を推定しなさい。ただし、推定の理由と過程をきちんと示すこと。

琵琶湖疏水に流れ込む水の年間流量を推定しなさい。ただし、推定の理由と過程をきちんと示すこと。