不知火文庫

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理不尽

「私だけなぜこんな罰をうけなくてはならないんだ。理不尽じゃないか」

「ああ、そうだ。お前はたまたま捕まった。そして、たまたま運悪く厳罰に処されることになった」

「不公平だ」

 彼は大声で叫ぶ。

「何を勘違いしてる。世の中が公平で慈悲に満ちた裁きを下してくれるとでも思っているのか。それは建前の話だ。この世界が何の目的も打算もなく、フィルタをかけることもなく、公平さと慈悲をもって我々を守ってくれているとでも思っているのか。本音と建前の差もわからず身の処し方を弁えないから、お前は今こうして理不尽さの犠牲者になろうとしているんだ。連れていけ」

 その後、彼の姿を見たものはいない。