不知火文庫

私設図書室「不知火文庫」の管理人が運営しています。

認識できる枠組みの外にはもっと大きな流れがある。そしてたいていの場合、それが認識できるようになる頃にはもう変えることができない。運命は変えられなくなってから我々のもとにやってくる。または変えられなくなったものを運命という。 運命がやってきた…

哲学

「哲学って何のためにするものなんですか」 「やめるためにだよ」

奏(「解放」の続編)

今でも扉を開けたときのことを思い出す。私にとって夢は大切なものだった。別れを告げるとき、私は誰に対してでもなく強がってみせた。悲しくない、つらくない、と自分自身に言い聞かせた。本当はそうではなかった。悲しかった。つらかった。たとえ苦しみか…

解放

夢に対する叶わない願いは私の心を歪めた。私は夢の中に悪いところや欠点、限界、嫌いなところを探しては願望を枯らそうとした。そこまではいかなくても、せめて情熱を冷ましたかった。冷めた心で世界に向き合いたかった。そうすれば、手が届かない苦しみか…

当事者意識

当事者であるという認識がないものは策を講じることよりも誰かのせいにすることに労力をかける。自分が当事者だと認識していれば、そうはならないはずだ。自分を当事者だと認識している人の言葉は立て板に水というようにはならない。当事者であれば少なから…

ある喪失

午後10時。今日は作業がはかどらない。やる気も出ない。今日はそういう日だということをうすうす理解しながら粘り続けたが、どうやら本格的に調子が悪いようだ。 ベッドに寝転がる。伸びをすると腹筋が伸びて気持ちがいい。ベッド脇にある背の低いテーブルの…

必要十分

言葉は多すぎると威力が落ちる。きちんと引き締めなさい。

日記帳(※5000文字くらいあります)

本を探していると、本棚から見覚えのある、手のひらに収まるくらいのノートを見つけた。使用開始日は二〇〇八年五月十三日、使用終了日は二〇〇八年八月三十一日。私が大学二回生の頃の記録のようだ。ノートの中には、当時考えたことや感じたことがたくさん…

切り札

「使うならまだしも、使わない切り札を準備なんてしておいてどうするのさ」 「たとえ使わないとわかっていても、最善策でなかったとしても、刀は使えるようにしておくものだよ。斬ること以上に斬れること、さらに言えば、斬れることより斬れると思われること…

迷い

私が他のものと一緒に居られるのは邪魔にならないときだけのように思えて悲しくなった。邪魔だと感じたら、私は他人をいとも簡単に突き放せてしまえるかもしれない。そんな自分に疲れていた。一緒にいてくれる人に申し訳なく思った。 邪魔になっても共存して…

あるいは無

〔↓のBGMを聴きながら読むと雰囲気が出るかもしれません〕 恐怖で身体が一瞬こわばる。数瞬後、私ははじけ飛ぶように逃げた。全力で走る。絞り出せる限りの力を振り絞る。橋が見えてきた。橋はいけない。目立つ上に挟み込まれると逃げられないからだ。橋の下…

テーブル

私の家に新しいテーブルがやってきた。姉が自分は使わないから、使うならもらってほしい、といって私に譲ってくれたのだ。卓は畳一枚を一回り小さくしたくらいの大きさ、こげ茶色の脚がついていて、その脚からはうっすらと木目が見えている。 私は姉からもら…

笑顔

「あの人の笑顔を思い出せないんだ」 「ふうん」 「なんでなんだろう」 「その人の本当の笑顔を見たことがないからじゃないの。それか、あなた自身が笑えていないからとか」

声2

ある人通りの多い交差点で、大きな声を出して主張を繰り広げている男がいる。そこに二人の男が通りかかった。片方の男がもう片方の男に尋ねる。 「どうしてあの人はあんなに大きな声を出しているのかな」 「…………」 「ねえ聞いてるの」 「…………」 「ねえってば…

Suicide is painless

山の中を歩き続けていると、浅い霧が漂い始めた。私たちは構わず道を踏みしめていく。足元には落ち葉や朽ち木が無数に散らばっている。歩を進めるたびに落ち葉や朽ち木が踏みしめられて、ぱりぱり、ぱきぱき、と小気味よい音が鳴る。朽ちたものを踏みしめる…

父と息子

父が私の家にやってきた。スピーカーの調子が悪いので、修理しに来てくれたのだ。父は私の家に上がり、図書室に入る。 「おお、相変わらずいい部屋だな」と父が言う。 「そうでしょ」 思わず誇らしい気持ちになる。 「秘密基地みたいで面白いよなあ」 父が楽…

よい師になれる器の側には、必ず深い死の影がつきまとう。

光⇔音の同型対応について(備忘録)

光の成分を分光分析して、極大付近の波長成分を音に対応させると視覚的な芸術を聴覚的な芸術に同型変換できるのではないか。 ただ、音楽は時間軸に沿った一次元のシークエンスしか持たないが、画像は空間軸に沿った二次元の広がりを持っている。さらに、映像…

悪いことだとわかっていても手を染めなくてはならないことがある、と彼は言う。彼が言っていることはたぶん正しい。そういうときもあるだろう。禁忌されていることに手を染めざるを得ないような「枠組みの崩壊」は低い確率ではあるが常に起きる危険性を孕ん…

水瀬優(断片・細部の追加修正が必要) 

「最高の芸術は記録の中にはないんじゃないかしら」 「どういうことですか」 「知りたい」 水瀬は私に尋ねた。私は静かに頷いた。 「そう」 彼女はそう呟くと私の方を向いて、すらりとした指を私の首にかけた。そして、私の背中へ回り込んだ。自分の首回りに…

信仰

「神がいるとして、何のために自らの創造物に様々な不幸を与えているかは誰にも分からない。創造された者達が不幸だと感じたり苦しんだりしていることに気づいていないのかもしれないし、何か大きな理由があるのかもしれないし、何の理由もないのかもしれな…

間違い

「私は間違っていることが許せないんだ」 「間違っていることが許せないことに対して、そもそも間違いとは何か、なんて質問をするつもりはないよ。ただ、間違いを許せないこと、許さないことが間違っている可能性がないとは思わないのか」

Summer eyes

仕事が終わった。今日も一日、大過なく過ごせた。ほっと勢いよく息を吐く。いい一日だった、と言ってよいだろう。 職場を出ると、太陽が沈む準備を始めていた。天と地に蒸し焼きにされているかのような暑さはすっかり落ち着き、淡い熱気の中を駆け抜ける風か…

粒子

電子、陽子、重力子、その他大半の粒子は、実在することにした都合がよいから実在するということにしている、と認識する方が粒子という概念を理解しやすい。 実在しているかどうかを示すことはできないが、実在していると仮定しても大した矛盾がなく、計算や…

Old places, old faces

掃除をしていると写真を見つけた。見つけたといっても、自宅の壁にかけている写真だ。普段から視界には入っているはずだが、ほとんど意識していなかった。そのせいで写真が存在していること自体忘れていて、真新しいものを発見したような気分になった。 写真…

線香花火

時刻は午後9時。盆を過ぎても相変わらず暑い夜が続いている。しかし、浜辺に出ると暑さの中にさわやかな、淡い水色のような心地よい空気がある。風が涼しい。夏の終わりがそこまできている。過ごしやすい季節の足音が聞こえてきそうだ。しかし、夏が終わって…

綺麗なものに関する備忘録

綺麗なものには嘘と錯覚が含まれている。綺麗なものに触れるとき、あるいは綺麗なものを作るときは努々気をつけること。

過去の案

中学高校時代に考えていた設定や登場人物、使い物にならないと思っていたけど、改訂すれば普通に使える。 ○沖田秀一 ○沖田いろは ○近衛宗一郎 ○神真太郎 ○水瀬優 ○志水美冴 ○伊崎杏 という名の人物たちは、特によく動いてくれそうだ。 並行世界、局所循環世…

テイスティング

私は行きつけの珈琲屋(http://hiroshige-coffee.com/)さんで珈琲を注文するときは複数の候補を挙げて、その中からランダムに出してもらうようにしている。 そして、銘柄が何かを当てる。当てても景品やおまけはない。ただ、自分の味覚の鋭さに自信がつく。…

カレーディナー

行きつけの珈琲屋さんは第1〜第3土曜日にカレーランチを、第4金曜日にカレーディナーを催している。どちらも予約制だ。 以前から気になっていたので、食べることにした。今まで食べたことのない味がする。すごく美味しい。 カレーを作った天海さん曰く、南イ…