不知火文庫

私設図書室「不知火文庫」の管理人が運営しています。

精密検査

「精密検査、受けたくないな。悪いところが見つかるかもしれないし。」 「あなたなら大丈夫だと思いますけどね。」 「わからないぞ。すみずみまで検査されるんだからな。」 「心の中までは検査されないから大丈夫ですよ。」

不文律

理由はいつまでたってもどこまでいってもわからない。数学の公理によく似ている。 理由と実在の両方を明確に定めて保てる世界は存在しない。理由の存在を保証すれば実在の存在は保証できず、実在の存在を保証すれば理由の存在は保証できない。この世界はそこ…

怪奇

ある日の夜、眠りにつきかけたころ、突然どこかからキリキリという不気味な音がし始めた。何かにみられているような、何かが迫ってくるような感覚に襲われる。私は布団に包まり、その端を握りしめて怯えながら夜を明かした。 気が付くと朝になっていた。私は…

阿呆

馬鹿が馬鹿であることを証明するために文章を書く人間は阿呆だ。

衝動、あるいは扉

直感は当たったその場で掴み取れ。血潮が褪せて、脈が消えるその前に。 生命の躍動、意識の核、水面下の閃光、取り出すためには正確さよりも勢いだ。全ては勢いから誕生する。今を切り拓くのは、調和した美しさではない。歪に尖った衝動だ。調和に惑わされず…

除草

17時。日はかなり西へ傾いてきている。日没まであと2時間程度だろうか。長い石段の前に立つ。石段に足をかけ、上り始める。一歩当たりの歩幅が小さくて上りにくいので数段飛ばしだ。階段を上りきると高台に出た。墓地の入口だ。付近には蛇口とたくさんのバケ…

怖いもの見たさの心理

怖いものをあえて確認しに行こうとするのは、未知の脅威を忌避するためかもしれない。また、その未知が身近にあればあるほど、確認しに行く動機が強まるのではないか。

転倒

知人に会うため西宮市を訪ねた帰り道。地下鉄御堂筋線梅田駅。ホームへ続く階段を下りる。目の前からやってくる人が急に私の視界の外へはじき出された。人が地面に倒れこんでいる。どうやら転倒してしまったらしい。 携帯電話が地面を滑る。私の前を通りすぎ…

メモ

私はメモが好きだ。携帯電話、タブレット、PCなどのメモではなく、紙のメモだ。入力の速さや管理のしやすさという観点からいえば電子媒体の方が優れていることが多いが、それでも私は紙のメモを好んで用いる。 捉えづらいもの、形になる前のものを捉えるには…

ブルーブラックと相棒

線がかすれはじめる。ああ、もうそんな時期か。せっかく今いい気分で字を書いていたのに。ため息を一つついて、私はペリカン4001ブルーブラックを取り出した。ガラス製のボトルのキャップをひねって外す。ボトルの入口付近にインクの薄い膜が張っている。そ…

文化の定義

文化を定義する方法はいろいろあると思うが、「『健康的な生活を送るためにした方がよいこと』を楽しくこなすための作法」がよいのではないかと思う。 【追記】 考えようによっては掃除だって文化だ。

拝借

できないことをし続けると好ましくないほど疲弊する。できないものはできないし、向いていないことは向いていない。それでもなおできるようになろうとして特定のことに居着いてしまうと思考や感覚が麻痺し、さらに深いもやのなかに入り込んでしまう。 こんな…

粋な人

「粋な人ってどんな人。」 「寒い日も暑い日も熱い湯で紅茶を淹れるような人のことだよ。」

抹茶プリン

抹茶プリンを作ることにした。彼女に抹茶プリンを作ってほしいといわれているのだ。先日、試しに作ったが、甘ったるい上に生クリームが濃厚すぎた。今回はそれを改善するために生クリームと砂糖の量を減らし、牛乳を増やす。 また、彼女が好きだと言っていた…

炭酸風呂

炭酸風呂を試すことにした。炭酸風呂に入ると血流がよくなるらしい。 二酸化炭素が毛穴から体内へ入る。すると、血液中の二酸化酸素の濃度が高まり、血管内が一時的な酸欠状態になる。身体はその酸欠状態を解消しようとして、より多くの酸素を送ろうと血流を…

π

次に何がやってくるかは誰にもわからない。1だろうか。2だろうか。3?4?それとも……。次に何がやってくるかわからない。永遠の謎だ。 πはどこまで行っても解けることのない謎を持っている。現実的な観点からいえば、少なくとも日常生活や科学の世界において…

室町

線香を取り出して軽くにおいを嗅ぐ。カレーのスパイスのような香りが鼻腔の奥をくすぐり、すぐ後に白檀が続く。音楽はかけない。この線香は自然の音と合わせる方が良さが引き立つ。 マッチを箱の側面でこする。燐が爆ぜる音とともに少し大きめの炎が生じる。…

そのレモネードに足りないもの

時刻は23時。漸く掃除がひと段落ついた。額や背中から玉のような汗が溢れ出ている。周囲の空気がねばねばとまとわりついてくる。熱が私から逃げないように空気で包み込もうとしているかのようだ。 今年の夏は随分暑い。夜になっても気温は高いままだ。しかも…

永遠桜

桜の優しい香りが漂う。桜の木の下、淡く青い花びらが広がる。その日、一斉に永遠桜が咲き始めた。それは二人の願いが叶うこととお互いが別れる運命にあることを意味していた。 「桜、咲いたね。」 「うん、咲いたね。」 永遠に咲き続けるといわれる桜が咲い…

ブルーな紅茶

砂は完全に落ちきっていた。時間は枠を超過し、測定不能な領域へ突入していた。容器には赤褐色の液体が入っている。明らかにいつもより暗い色だ。急がなければ。慌てて容器から赤褐色の液体を別の容器に注ぐ。思わずため息が漏れる。赤褐色の液体を一口すす…

赤い万年筆

胴体を右手の親指、人差し指、中指でつまみ、キャップを左手の親指、人差し指、中指でつまむ。そのまま左右の手でひねるとキャップが外れる。隼の嘴のような形をした、銀色のつややかなペン先が顔をのぞかせる。 ペン先を紙の上に乗せ、力を抜いてペンを走ら…

万年筆

私は万年筆が大好きだ。使うようになったきっかけは字を書く際の腕の疲労を軽減するためだ。万年筆はファッション性の強い文房具だといわれることが多いようだが、私はほぼ実用性を目当てに万年筆を使い始めた。最初に購入した万年筆はプラチナ万年筆のセン…

ラップバトルとTKda黒ぶち氏

先日たまたま面白い下ネタを紹介したりぶつけ合ったりする友人にネタを送るためにgoogleであるキーワードを検索したら、News Rap Japanの動画が引っ掛かった。 タイトルが面白かったので視聴してみると、下ネタやディスりの応酬が繰り広げられていた。面白い…

楽しい紅茶

フレンチプレスにティースプーン1杯分の紅茶の葉を入れた。そして、軽く左右に振る。そうするとフレンチプレスの底面に葉が均等に並ぶ。プレスに鼻を近づけて香りをかいでみる。抽出した紅茶の香りとは違ってグリニッシュだが、いい香りだ。フレンチプレスに…

掃除と誰の義務でもない仕事

職場の公共スペースを掃除することが僕の日課だ。 最初に始めたのはある日の昼休憩。僕は休憩時間にはたいてい本を読んだり同じ課の人たちと談笑したりするのだが、その日はなんとなくみんな静かだった。かといって本を読む気にもなれない。 時間を持て余し…