不知火文庫

私設図書室「不知火文庫」の管理人が運営しています。

2017-08-01から1ヶ月間の記事一覧

声2

ある人通りの多い交差点で、大きな声を出して主張を繰り広げている男がいる。そこに二人の男が通りかかった。片方の男がもう片方の男に尋ねる。 「どうしてあの人はあんなに大きな声を出しているのかな」 「…………」 「ねえ聞いてるの」 「…………」 「ねえってば…

Suicide is painless

山の中を歩き続けていると、浅い霧が漂い始めた。私たちは構わず道を踏みしめていく。足元には落ち葉や朽ち木が無数に散らばっている。歩を進めるたびに落ち葉や朽ち木が踏みしめられて、ぱりぱり、ぱきぱき、と小気味よい音が鳴る。朽ちたものを踏みしめる…

父と息子

父が私の家にやってきた。スピーカーの調子が悪いので、修理しに来てくれたのだ。父は私の家に上がり、図書室に入る。 「おお、相変わらずいい部屋だな」と父が言う。 「そうでしょ」 思わず誇らしい気持ちになる。 「秘密基地みたいで面白いよなあ」 父が楽…

よい師になれる器の側には、必ず深い死の影がつきまとう。

光⇔音の同型対応について(備忘録)

光の成分を分光分析して、極大付近の波長成分を音に対応させると視覚的な芸術を聴覚的な芸術に同型変換できるのではないか。 ただ、音楽は時間軸に沿った一次元のシークエンスしか持たないが、画像は空間軸に沿った二次元の広がりを持っている。さらに、映像…

悪いことだとわかっていても手を染めなくてはならないことがある、と彼は言う。彼が言っていることはたぶん正しい。そういうときもあるだろう。禁忌されていることに手を染めざるを得ないような「枠組みの崩壊」は低い確率ではあるが常に起きる危険性を孕ん…

水瀬優(断片・細部の追加修正が必要) 

「最高の芸術は記録の中にはないんじゃないかしら」 「どういうことですか」 「知りたい」 水瀬は私に尋ねた。私は静かに頷いた。 「そう」 彼女はそう呟くと私の方を向いて、すらりとした指を私の首にかけた。そして、私の背中へ回り込んだ。自分の首回りに…

信仰

「神がいるとして、何のために自らの創造物に様々な不幸を与えているかは誰にも分からない。創造された者達が不幸だと感じたり苦しんだりしていることに気づいていないのかもしれないし、何か大きな理由があるのかもしれないし、何の理由もないのかもしれな…

間違い

「私は間違っていることが許せないんだ」 「間違っていることが許せないことに対して、そもそも間違いとは何か、なんて質問をするつもりはないよ。ただ、間違いを許せないこと、許さないことが間違っている可能性がないとは思わないのか」

Summer eyes

仕事が終わった。今日も一日、大過なく過ごせた。ほっと勢いよく息を吐く。いい一日だった、と言ってよいだろう。 職場を出ると、太陽が沈む準備を始めていた。天と地に蒸し焼きにされているかのような暑さはすっかり落ち着き、淡い熱気の中を駆け抜ける風か…

粒子

電子、陽子、重力子、その他大半の粒子は、実在することにした都合がよいから実在するということにしている、と認識する方が粒子という概念を理解しやすい。 実在しているかどうかを示すことはできないが、実在していると仮定しても大した矛盾がなく、計算や…

Old places, old faces

掃除をしていると写真を見つけた。見つけたといっても、自宅の壁にかけている写真だ。普段から視界には入っているはずだが、ほとんど意識していなかった。そのせいで写真が存在していること自体忘れていて、真新しいものを発見したような気分になった。 写真…

線香花火

時刻は午後9時。盆を過ぎても相変わらず暑い夜が続いている。しかし、浜辺に出ると暑さの中にさわやかな、淡い水色のような心地よい空気がある。風が涼しい。夏の終わりがそこまできている。過ごしやすい季節の足音が聞こえてきそうだ。しかし、夏が終わって…

綺麗なものに関する備忘録

綺麗なものには嘘と錯覚が含まれている。綺麗なものに触れるとき、あるいは綺麗なものを作るときは努々気をつけること。

過去の案

中学高校時代に考えていた設定や登場人物、使い物にならないと思っていたけど、改訂すれば普通に使える。 ○沖田秀一 ○沖田いろは ○近衛宗一郎 ○神真太郎 ○水瀬優 ○志水美冴 ○伊崎杏 という名の人物たちは、特によく動いてくれそうだ。 並行世界、局所循環世…

テイスティング

私は行きつけの珈琲屋(http://hiroshige-coffee.com/)さんで珈琲を注文するときは複数の候補を挙げて、その中からランダムに出してもらうようにしている。 そして、銘柄が何かを当てる。当てても景品やおまけはない。ただ、自分の味覚の鋭さに自信がつく。…

カレーディナー

行きつけの珈琲屋さんは第1〜第3土曜日にカレーランチを、第4金曜日にカレーディナーを催している。どちらも予約制だ。 以前から気になっていたので、食べることにした。今まで食べたことのない味がする。すごく美味しい。 カレーを作った天海さん曰く、南イ…

目的か手段か

愛を目的とみる人はたいてい悲観的である。 愛を手段とみる人はたいてい楽観的である。

断言その2

私は極力断言することを避けるようにしている。会話をしているとき、考えごとをしているとき、文章を書いているとき、その他ほとんどの場面において。 自分の知性が完全ではないこと、自分が間違っている可能性があることを考慮しているうちにそうなった。断…

理由

「ところで、どうして君は私を誘ったんだ」 「何だ、理由がないと誘っちゃいけないのか」 「いや。ただ気になっただけだ」 「何となくそうしたかっただけだよ」 ―理由はない時がある。理由は要らない時がある。

評価する者

自分の行動を評価するのは自分ではなく自分以外の者たちだ。この事実が人を幾分倫理的にしたり粋にしたりするのではないか。

文通

文通の相手を募集するためのサイトを見つけた。以前から憧れていたので、勇気を出して一人の方にメッセージを送信する。返事は来るのだろうか。一日め、来ない。二日め、来ない。三日め、こない。そんなものかもしれないなあ。四日め、職場の同僚たちと酒を…

【あなたがそばにいてほしい】いつか書いた詩

悲しみを言葉にする 返事はもうわかってる 私は語らない。語りたくない もらえるものがわかっていても 勇気を出せないこともある あなたの言葉を得るためだけに語るのは 惨めですごく嫌になる 私はただ、あなたがそばにいてほしい 〔追記〕 ↓元ネタはPink Fl…

希望

「希望って何なんだろう」 「絶望と仲良くできている状態か、その状態のときにみえる錯覚のことだよ」

悲しみと仲良くすること(走り書き)

「私は悲しい」 「そうか。それでも、生きていかなくてはならない。君も私も。」 諦めることが悪いとは思わない。救いはまだある。楽しみを追い求めるだけではなく、悲しみと仲良くすることを学んだ方がいいのだろう。 「うん。今は悲しみをうまく味わう訓練…

明示的なもの、あるいは生き方

「なぜあなたはこんなことをするのですか。私には割に合わないことをしているようにしか見えません」と彼女は言う。 私はそんな難しいことを考えてはいない。明示的な思想や理念はない。しなくてはならないと思ったから、したいと思ったからそうした。ただそ…

これ、かっこいいね(走り書き)

時刻は18時前。日が沈むまで、あと一刻程度だ。空の青が暗くなり始め、西の水平線付近は赤みを帯び始めている。実家に帰ると父がガレージでジャズを聴いていた。 「ただいま」と父に言った。 「おう、おかえり」 「これ、かっこいいね」 「そうだろう。あま…

少数派

少数派は平均からのズレを自身で折衝して生きていかなくてはならないという宿命を持っている。 一般的には少数派の意見や存在も、多数派のそれと同じように尊重されることが好ましいとされている。しかし、その尊重が多数派から少数派への働きかけによって生…

終着駅

私の責任じゃない、と彼が叫ぶ。 確かに私が知る限り彼に責任はない。少なくとも私の感覚では。しかし、それを証明して何になるのだろう。責任がなければ苦難が回り道して私たちを避けてくれるというわけではない。ほとんどの苦難は責任があろうとなかろうと…

【煩雑注意】〔備忘録〕主題、文体等についての備忘録(走り書き)

文章、特に状況表現は、まず状況をぶつ切りの文章で書き立てていく 読者に説明するのではなく仮想的に体験させるような文章を書きたい 余計な講釈は省いて行間へぶち込め 垢抜けた、こなれた、力の抜けた 永遠の謎 ブリコラージュ コノテーション・行間 ○○論…