不知火文庫

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原理主義

原理主義のもとになった原典に人格があったり、原典を作成したものたちが生きていたりしたら、彼らは原理主義になって原理を遵守するのかな」

「どうだろうね。でも僕ならしないな。たぶん、原理というのはベストとまではいかなくても、周囲の環境や条件をベターにしやすくなるように設計されたもの。あくまでも、手段であり道具でしかない。それも、期間限定の。それを不可侵のものとしてあがめるなんて、考えるだけでも気が滅入るな」

「わかる、それ。たぶん、原理は聖なるものや不可侵のものをあがめるために作られたんじゃない。我々の幸福と生命を守るための知恵として創り上げられたものなんだろうね。今の時代から振り返るとそう解釈したくなるだけで、本当のところはわからないけど」

「それにしても、人類史上最も多くの人を殺してきたのは、人を導くはずだった原理や原典なのかもしれないと思うと複雑な気持ちになるね。それでもないよりはましだったのかな」

美しい死

 彼が死んだ。仮想の中で死に続けるうちに疲れてしまったのだろうか。

 美しく死ぬにはまだ早い。まだ無粋なくらい必死で生きられるはずだ。私は彼にそう伝えたかった。しかし、彼にとってはそうではなかったのかもしれない。彼は、いつか来る生きられなくなるときもより先に彼自身を殺そうとし、そして、美しく死んだ。

 美しく枯れるにはまだ早い。美しく枯れるよりも、見苦しくても行動することを選んでほしい。その思いが彼に届くことはなかった。

 一度死ねば、もう二度と生き返らない。もう二度と元には戻らない。

 

 無粋なほど必死で生きるものは見苦しい。ときには不快ですらある。それでも、彼にはまだその生き方を手放してほしくなかった。だが、彼は階段をひとつ登った。

 

  死はいつも私たちの側にいる。そして、階段を登るほどに、心に飼う死は増えていく。

 

 彼が私の中からいなくなった。そして私だけが残された。彼が埋めていた部分はそのまま消えたのか、それとも私の中に融けたのか。今の私にはわからない。

 

 

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個性

 その分野で一番または無二の存在になれるか、と尋ねられたら、あなたははいと答えられるだろうか。あなたの答えがどちらでも、あなたはおそらくそうはなれない。そういうものだ。でも、それでいい。ほとんどの人はそんなものだ。

 個性というものについていうならば、この世界はあまり慈悲深くない。「私」にできることは他の人にもできる。「私」の代わりはいくらでもいる。世界は私たちから自信や個性をどんどん剥ぎ取っていく。私たちはどんどん何かを失っていく。

 しかし、本当の勝負は失ってからだ。個性は喪失を経て生まれ変わる。

 きちんと恐れ、きちんと失え。

 

↓4分37秒からのギターソロ→キーボードソロがすごく好きです。

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